税理士先生の職員の方の、実務で役立つ情報を提供させていただきたいと思い動画を撮らせていただいております。
ぜひ皆様の、業務でお役立てください。
本記事とあわせて、イメージがつきやすいと思うのでぜひ動画もご覧ください。
無道路地の現地調査のポイント💡
まず、無道路地の現地調査する際に確認すべきポイントを、2点ご紹介します。
1.面積と土地の形状を確認する
2.道路開設費用の距離・長さ・形状を確認する
1.面積と土地の形状を確認する
無道路地では、測量図が存在しないケースが多くあります。
その場合は「ドロガー」という座標取得の機械を用いて、土地の点を取得する必要があるのです。
2.道路開設費用の距離・長さ・形状を確認する
実は、税理士事務所によっては、現地調査をせずGoogleマップによる確認だけで終わらせるケースもあります。
しかし私は、必ず現地調査に行くようにしています。なぜなら実際の現場を目にすることで、気づくことが多いからです。さらに調査時には必ず動画を残すようにしています。動画を残しておくことで、あとから確認できるのでおすすめです。
無道路地とは?
無道路地の実務をご紹介する前に、無道路地について説明します。
無道路地には大きく分けて以下の、3つのケースがあります。
1.道路に接していない土地
2.道路に接しているものの、接道義務を満たしていない土地
3.行動と畑の間に里道がある土地
1.道路に接していない土地
例えば、公道と畑があって、その間に道路がないケースが挙げられます。
こちらが最も一般的な無道路地です。
2.道路に接しているものの、接道義務を満たしていない土地
例えば接道義務が2mなのに、幅員が1.5mしかないケースです。
この場合、0.5m接道義務を満たしていないということになりますので、こちらも無道路地と評価します。
3.行動と畑の間に里道がある土地
こちらも無道路地になります。
実務で多いのがこちらのケースです。
今回、実務でご紹介するのも、このパターンになります。
道路には定義があります。
道路の定義から外れている場合は、基本的に無道路地と評価するというわけです。
道路の定義と接道義務
道路の定義
そもそも、道路の定義とは何でしょうか?
道路については、建築基準法の第42条で定義されています。
幅員4m以上、中心線から2mずつあるものが一般的な道路です。
接道義務とは?
一方、接道義務については、建築基準法第43条で規定されています。
敷地に建物を建てる場合には、建築基準法で定められた4m以上の公道に、2m以上接していなければいけません。これが接道義務です。こちらを満たしていないと、建物を建てられません。この接道義務を守っていないものが、無道路地というわけなのです。
なお道路についての詳細は、各自治体のWebページで確認できます。
接道義務は、奥まった土地であっても必ず求められます。具体的には、道路に面する間口が2m以上必要です。これを満たしていないと、建物の再建築ができません。つまり、相続や購入で土地を取得しても、家を建てることができないわけです。
無道路地の評価の方法
無道路地の評価は、不整形地としての評価額から、無道路地のしんしゃく額を引いて行われます。
無道路地の評価額=不整形地としての評価額-無道路地のしんしゃく
無道路地のしんしゃく
無道路地のしんしゃくとは、一体何でしょうか?
土地は、建物を建てるためにあるものです。しかし、接道義務を満たしていない土地には、建物を建てられません。言い換えれば、何か建物を建てたいのであれば、接道義務を必ず満たさないといけないというわけです。
どうしても建物を建てたい場合、どうすればよいのでしょうか?
答えは、道路を開設することです。建物を建てるのに必要な道路開設費用を、土地の評価額から控除する、これが無道路地のしんしゃくなのです。
「道路の購入費用」と言い換えるとわかりやすいですね。
しんしゃく額の計算方法
無道路地のしんしゃく額の計算方法をご紹介します。
無道路地のしんしゃく=路線価(※1) ×道路開設の面積㎡(間口×距離)(※2)
間口は、だいたい2mで計算することが多いです。
(※1)どの路線価を使う?
無道路地の価額は、実際に利用している路線の路線価をベースとします。
(※2)どの距離を使っていいのか?
接道義務に基づいた最小限度の通路を開設する場合のその通路に相当する部分の価額です。
シンプルな無道路地の場合、計算はそれほど難しくありません。
では実務上、問題になる無道路地はどのようなものでしょうか。
例えば普段利用している路線が2つあって、迷うことがあります。そのような複雑なケースについては、過去の裁決例や参考文献をもとに判断しています。こちらについては、かなりマニアックな内容になってしまいますので、別の機会に解説します。
今回は、参考文献や裁決例の引用のリンクを張っておきます。
ぜひ機会があれば読んでみてください。
実際の現場の様子は、本動画をご覧ください。(5分23秒以降)
座標を地図上に表示させるには
現地での作業が終わったあとは、ドロガーを使って現地で取得した座標を、地図に取り込んでいきます。
使用するのは「QGIS」という地図アプリです。(https://qgis.org/ja/site/)
座標をアップロードして、レイヤーを追加すると、座標が地図にプロットされます。
パッと見はわかりづらいですが、地図を拡大すると座標があるのがはっきりわかります。
今回の動画では、あぜ道を通って対象の土地の座標を4点取得しました。
さらに取得した座標を、「土地作図くん」にアップすることで、形状も含めてシステムで再現されます。非常に使いやすい仕様になっています。
なぜ実地調査が必要なのか
Googleマップは精度が高いので、現地に行かなくても、ある程度の情報を把握することが可能です。
しかし私は、現地に行ってしっかりと情報を取ってくることが大切だと考えています。そして私はどこの現場に行っても、動画を撮影しています。撮影した動画は、簡単に編集して、所内のチームやお客様と共有しています。
私が動画を撮影する理由は2つです。
1.動画の方が写真だけよりも伝えられる情報量が多いから
2.動画を撮影することで、お客様にも安心していただけるから
評価額というものは、ちょっとした誤差で大きく変わってしまいます。ですから、きちんとした評価をするためにも、現地での測量が必要なのです。
また、ただ評価するだけではなく、お客様に情報提供するまでが私たちの仕事です。
もちろん、そこまで時間を割くと私たちの工数がかかります。私たちの工数は請求額に反映されるため、お客様の中にはそこまでする必要はないという方もいます。
例えば、遠方で時間やお金がかかるのであれば、単価の高い上席の所員ではなく、所内のスタッフが動画を撮ることで、金額を抑えられます。また、現場とテレビ電話でつなぎ、状況をモニタリングするやり方もあるでしょう。
最初にこちらですべてを決めてしまうのではなく、常にお客様に選択肢を提示して、その中で選んでいただく方がスムーズです。
まとめ
今回の記事では、無道路地の実務についてご紹介しました。
- Googleマップだけに頼るのではなく、現地調査に行く
- 調査時には動作を残す
- 土地の座標を取得するには、ドロガーという機械を使う
- 「土地作図くん」を用いれば、形状も含めた形で再現が可能
- 事務所側ですべて決めるのではなく、お客様に選択肢を持たせる
ドロガーを使って現場での緯度経度の正確な情報を取得することができれば、より正確に土地を評価できます。皆さんが実務をする上で、少しでも参考になれば幸いです。