税理士先生の職員の方の、実務で役立つ情報を提供させていただきたいと思い動画を撮らせていただいております。

ぜひ皆様の、業務でお役立てください。

動画の中で、セットバックとは?というところから解説を行っています。

セットバックについてまだあまり分かっていないという方は、学習コンテンツとしても活用してください。

セットバックとは?

セットバックとは、建築基準法に定められた接道義務を満たすための道路後退を指します。

セットバック(道路後退)は、土地の利用や評価額を決定する重要な要素であるため、正確な見積もりが必要となります。

この記事でわかること

セットバックの計算方法

セットバック方法の調査手順

本記事では実務目線でセットバックを正確に計算するための調査方法を解説します。

実際に、税理士の私がセットバックを計算するために、どのような調査をしているのか解説しますので、皆さんも実務でのセットバックの計算にお役立て下さい。

動画では、具体例を元にセットバックの算出方法の解説や実際の調査の様子を撮影しています。動画もあわせてご覧ください。

セットバック:「評価対象地の一部を道路用地として市に提供するために土地を後退させること」

セットバックとは、評価対象地の一部を道路用地として市に提供すること(道路後退)をいいます。

なぜセットバッグが必要なのかというと、宅地に定められた建築基準法の接道義務を満たすためです。

建築基準法上の接道義務とは、建物を建てる場合には原則として、その土地の幅員(幅)4m以上に道路が2m以上接してないといけないとのルールがあります。(上の右図参照)

しかし、評価対象地の全面幅員が2mの場合、道路が4m満たないと建物を建てられません。(上の左図参照)

そこで建物を建築する場合には、4mに満たない部分の道路幅員を市に提供する必要があります。これをセットバックといいます。

セットバックが必要な道路の条件

大阪市の場合、以下の表の通り、42条の1条一号から五号までと42条の二号となります。

セットバックが必要な道路は、建築基準法上の42条に該当する道路です。

道路の種類概要
幅員4メートル以上のもの42条1項1号道路法による道路(高速自動車道を除く)で幅員4メートル以上のもの。
一般的に国道、府道、市道が該当します。
42条1項2号都市計画法、土地区画整理法、旧住宅地造成事業に関する法律、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法または密集市街地整備法により道路。
一般的には都市計画道路や区画整理による道路、開発道路などが該当します。
42条1項3号建築基準法施行時または都市計画区域編入時(注)に既に存在する幅員4メートル以上ある道。
42条1項4号道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における新設または変更の事業計画のある道路で、2年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの。
42条1項5号土地を建築物の敷地として利用するため、建築基準法令等で定める基準に適合する道路で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの。
いわゆる位置指定道路です。
幅員4メートル未満のもの42条2項建築基準法施行時またはとし計画区域編入時(注)に既に道として使用され、それに沿って建築物が建ち並んでいる幅員4メートル未満の道で特定行政庁が指定したもの。
附則5項市街地建築物法第7条但し書によって指定された建築線で、その間の距離が4メートル以上のものは、その建築線の位置に建築基準法第42条第1項第5号の規定による道路の位置の指定があったものとみなす。幅員4メートル未満の市道など。
注:大阪市の場合、茨田地区(鶴見区徳庵、中茶屋、浜、浜田大宮、諸口、焼野、安田、横堤)、長吉地区(平野区長吉川辺、長吉出戸、長吉長原、長吉長原西、長吉長原東、長吉六班)は昭和31年2月17日。その他は昭和25年11月23日

セットバックを計算する上での注意点2つ

  • 道路が建築基準法42条2項(二項道路)に該当
  • 道路が私道または公道か要確認(私道はセットバック不要)

1つ目の注意点は、道路が建築基準法42条2項(二項道路)に該当しているかどうかです。

 道路幅員が4mに満たない道路すべてについてセットバックが必要となるわけではありません。

あくまで建築基準法に規定している道路についてのみ(上表の赤色マーカー部分)セットバックが必要となります。

2つ目の注意点は、道路が私道なのか公道なのか必ず確認しましょう。

セットバックが必要ない道路の例として私道が挙げられます。
私道はセットバック不要のため、セットバッグ評価の評価減ができません。

仮に私道道路を二項道路と勘違いしてセットバックすると、土地が過剰に評価減されてしまうため、ご注意ください。

セットバックの計算方法

具体的なセットバッグの面積の計算式は、以下の通りです。

セットバック面積=セットバックによる後退距離(m)×評価対象地の間口(m)

セットバックが必要な左上図の例の場合、建築基準法上では4mの幅員がないと、建物を建てられません。

2mを市に道路提供するため、2m×8mの16平米を道路用地として市に提供する必要があります。
したがって、所有している土地が16平米少なくなるため、16平米部分の土地の価値が減ることになります。

また、セットバックが必要な土地の評価額は、セットバック面積の通常評価額から70%相当額を引いて評価します。 

そもそも、土地というのは建物を建てるために価値があると考えます。
セットバックをしないと建物を建てられないとなると、土地はセットバックの制約された分だけ価値が減少します。

そのため、セットバックが必要な土地は、セットバック部分の評価額の70%に評価減します。

セットバックの幅の決定方法

  1. 中心後退
  2. 一方後退

どちらの方法でセットバックするかは、市役所の建築指導課(市により担当課の名称が異なる場合あり)で調査します。

1.中心後退

中心後退とは双方2mの位置まで後退し、最終的に4mの道路幅員にすることをいいます。

2.一方後退

一方後退とは相手側が例えば路線だったり、河川だったり、崖などによって土地を後退させられない場合には、道路の反対側から4mまで後退させ、最終的に4mの道路幅員にすることをいいます。

道路後退の幅は道路中心線の位置で決定

道路後退の幅を決める重要なポイントは、道路の中心線の位置です。

道路の中心線の位置は評価対象地ごとに調べる必要があります。

例えば道路幅員が2mだとすると、2m道路後退すればいいと思って道路の真ん中を中心線として2m÷2=1mをセットバッグ(道路後退)として計算すると思いがちです。

しかし、反対側の建物が既にセットバックしている可能性があるので、反対側の建物がセットバックしているか確認する必要があります。

道路中心線は市役所での確認が必須

道路後退の実際の幅は、市役所調査で確認しないとわからないことが多いため、市役所の建築指導課でどのようなセットバック(道路後退)が必要なのか確認をするのをおすすめします。

実際に、私が経験した一方後退の事例をあげましょう。

北側が崖になっていて、南側に土地がある事例でした。

道路幅員が①の崖から土地から4.5mあるというような状況だったとします。

一見、セットバックの必要はなさそうですが、市役所で道路査定図を取得して、確認すると、②2.5mしかありませんでした。

その差は③の2mを県が擁壁工事による任意後退で2m後退していました。

この場合、道路幅員として4.5m確保できているので、セットバッグの必要がないと勘違いしがちです。

ところが、建築指導課に確認すると、道路中心線から2mずつ後退が必要といわれました。
4m-2.5m=1.5m÷2をして、0.75mを道路中心線から後退が必要と指摘を受けました。
道路中心線は上図のように土地側に寄っており、そこから0.75mセットバックし、市に提供しないといけないという指導でした。

実際にセットバックの幅を算出する際は、市役所での確認が必須となります。

【3step】セットバックの調査方法の手順

セットバックの調査方法の手順は、以下の通りです。

STEP1
WEB上での事前調査
STEP2
現地調査
STEP3
市役所での調査

順に説明します。

step1:WEB上での事前調査

各自治体によっては、webページで道路幅員の情報が確認できます。

尼崎市を例にwebページで道路幅員を確認する方法を説明します。

web上で「尼崎市市役所」と検索すると、市役所のwebページが表示されます。

webページの一番下の方にある「地図情報の検索」の項目をクリックすると、「地図情報尼崎」の案内ページがあります。
さらにページ下部の「地図情報尼崎」の外部リンクをクリックすると、地図情報が掲載されたページにたどり着きます。

参考URL:地図情報あまがざき

ページ上部に「地図情報の選択」の項目があり、確認したい情報を選択できます。

たとえば、認定路線での道路幅員線を確認する場合は、「道路情報」→ページ左側の「表示きりかえ」から「市道路認定路網図」と「道路幅員線(現状道路参考)にチェックを入れると、地図上で該当する道路が何メートルあるかが表示されます。

該当の道路が建築基準法上の道路なのかは画面上に表示されます。

幅員が4m未満のため、二項道路に該当するか見るには、表示きりかえメニュー「建築基準法指定道路」を押すと確認できます。

摘要に記載がありますが、青色の場合は42条の二号または42条1条の3号のどちらかになります。こちらは実際に市役所に行って、確認する必要があります。

ただし、こちらの画面の情報は実際とは微妙な誤差が生じる場合があります。
私が市役所に確認したところ、最終的には市役所に確認してもらえると良いとのことでした。

また、その道路幅員は現地調査しないとわからないため、現地で計測する必要があります。

現地調査の前には、ある程度事前に道路情報をWEB上で確認すると、調査の手間が省けるでしょう。

step2:現地調査|ウォーキングメジャーでの計測

 次に現地での調査方法を説明します。

初めに評価対象地で距離(長さ)をウォーキングメジャーで計測する方法をご紹介します。

評価対象地の具体的な条件は以下の通りです。

  • 道路の種類:建築基準法42条2項道路
  • 後退方法:中心後退
  • 必要な道路幅員:4メートル

作業手順

  1. 両端の距離を図る
  2. 両端以外の中間地点などを複数箇所を計測

ウォーキングメジャーは、一輪車のように車輪を転がして、カウンターを動かし、移動距離で長さを測ります。

ウォーキングメジャーによって、大きさや測れる距離が異なります。

距離を測る際は、距離を測る始点で必ずカウンターを0にしてから計測しましょう。

道路幅員の幅は一定ではないため、両端以外にも複数箇所を細かく計測するのがポイントです。

step2:現地調査|ドロガーでの計測

ドロガーは測りたい距離の頂点の座標を取得して、距離を計測する機器です。

計測箇所は、ウォーキングメジャーと同じです。

  1. 両端の距離を図る
  2. 両端以外の中間地点などを複数箇所を計測

道路幅員の幅は一定ではないため、複数箇所の座標を取得しましょう。

複数箇所の座標を取得し、それぞれの点と点を繋いで距離を計測します。

step3:市役所での調査

  1. 市役所の担当課(建築指導課)を訪問
  2. 建築計画概要書を取得(申請書を記入)
  3. 市役所の担当者から必要な道路中心線の位置と距離を確認

建物が建築する際に、必ず市役所または指定確認検査機関に建築基準法の規定に適合しているかどうかチェックしてもらいます。

その際に一緒に提出されるのが、建築計画概要書です。

建築計画概要書には、以下の内容が記載されています。

  1. 建築主・代表者・設計者・工事監理者・工事施工者などの氏名及び住所
  2. 敷地面積や床面積
  3. 建物自体の大きさ・高さ
  4. 建物自体の概要及び見取り図
  5. 配置図

5.配置図に道路幅員や間口(土地と道路が接している幅)の情報が掲載されています。

現地調査での計測結果と一致しているか、現況と一致しているか確認しましょう。

建築計画概要書上ではセットバックが未完了であっても道路の幅員は4mと記載されていますので、必ず現況と一致しているかご確認下さい。

まとめ

セットバックを算出するには、まずセットバックの必要性の有無を判断します。

セットバックの算出方法は中心後退と一方後退の2種類となります。

どちらの方法に該当するかは①WEB上での調査、②実地調査、③市役所での調査で確認しましょう。

そこから実際にセットバック面積を計算し、評価対象地の評価額を算出します。

セットバックの算出は土地の評価に欠かせない大切な工程となるため、綿密な調査を元に、正確に計算しましょう。